2年前。
息子コペルが4年生の頃のこと。
夕飯の後、リビングを出て行ったきり
コペルがなかなか戻ってこなかった。
何をしているんだろうと思ったけれど、
彼ももう4年生。
赤ちゃんじゃないんだし、姿が見えないからと言って家の中ではそうそう危険なこともないか、と
私はさして気にもとめなかった。
しばらく経って、家事もひと段落して見渡すも
まだ息子はリビングに戻ってきていない。
呼んでみたが返事もない。
もう一度呼ぶがやはり返事はない。
洗面所の方から物音がするので
おそらくそちらにいるのだろうと廊下に出ると、
洗面所からコペルが走り出てきて私を押しのけるようにして
トイレへと駆けこんでいった。
急いで追いかけたが
コペルは中から鍵を掛け
呼びかけても応えない。
でてこない。
だんだん心配になってくる。
騒ぎを聞きつけたジョニーさんが
トイレの前までやってきて
真剣な顔をしてこう言った。
え?何?鼻血?怪我?
どうして?
大丈夫なの?
何が何やらわけがわからず、トイレのドアを叩いた。
コペルは昔からそうだ。
怪我をしたりすると、なぜか一度隠そうとする。
幼稚園生の頃も
何だか静かだなーと覗きこんだら
ハサミで指を切ってしまい
一人で一生懸命机に飛んだ血を
拭き取っているところだったということもあった。
怒られると思うのか
心配かけまいと思うのか。
自分一人で解決しようと思うのか。
はたまたその全部なのか。
絶対に怒ったりはしないのに。
しばらく説得を続けると
ゆっくりドアが開いて
中から血だらけのコペルが泣きながらでてきた。
怪我をしたのだろうと予測していたが
予想以上の出血量に怯む。
何?どこを切ったの?
何で切ったの?
見せて!!
コペルの右脇腹に6〜7センチに渡って
スパッと刃物で切ったような傷があり、
そこからかなりの量の血が流れていた。
傷は浅いが、場所が場所だけに
動くたびに傷口がパカパカ開いてしまうのだ。
怒ってないよ!これはびっくりしてるんだよ。
とにかく止血を、と
絆創膏でキツく傷口を合わせ
上からガーゼで傷口をおさえた。
コペルがお腹を切ってしまったのは
洗面所に置いてあった、貝印の剃刀らしい。
私が眉毛、顔や襟足の産毛を剃るのに使っていた剃刀だ。
これをいたずらしていて切ってしまったということは話してくれたけれど、
何故、どうやっておなかを切ってしまったのかは
何度聞いても黙っていた。
手が滑ったとしてもお腹なんて切れる?
落としたとしてもお腹なんて切れる?
むしろ切ろうと思わなくっちゃ切れない場所じゃない?
でも間違えたと繰り返すばかり。
医師である義父に見せ、
傷は深くなく皮膚がきれているだけということがわかり一安心。
お腹の皮膚は大きく動く場所であるため、傷口がひらいてしまうので
念のため縫合することとなった。
それでも大事に至らずほんとうに良かった。
このように危ないものをすぐ子どもの手に取れる場所にしまっていたのは私のミスであった。
コペルもコケシもだいぶ大きくなり、
赤ちゃんの時のように
家の中で起こりうる事故に対しての危機意識が薄れていたのだ。
その後もコペルはお腹に剃刀を当てた理由を
頑として話さず
ジョニーさんと
あれは毛を剃ろうとしたんじゃないか、
なんてこっそり話し合ったのだが、
その謎は意外なところで判明した。
その年の夏、
息子が書いた読書感想文である。
続く。
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