ちょっと前の話になるが娘と息子を連れて劇団四季の「オペラ座の怪人」の舞台を見に行ってきた。
私は以前見たことがあるが、子どもたちは初めて。
どこで知ったのか息子が興味を持って見に行きたいと言い出したのだ。
オペラ座の怪人のあの仮面や舞台装置は確かに中二心をくすぐるよね!
私も大好きな演目だし、
コペルは中学校で演劇部に所属している。
質の高い舞台を見ることは彼にとっても勉強になることかもしれない。
まだ小学4年生のコケシには少し難しいテーマの劇だなとは思ったが、一緒に行きたがったので
本を読んで予習した上で
さらに舞台版のあらすじを教えて臨んだのだが…
とにかく素晴らしかった。
生の舞台はやはり素敵だ。
迫力の歌声に魂を揺すぶられて、しばらくは現実世界に戻ってこれなかった。
子供には少し複雑な内容ではあったけど、娘も娘なりに理解し楽しんでいた様子。
しばらくは猫を相手にファントムごっこをしたりもしていたくらいだ。
急にエンジェルにされて戸惑うネコの図↑
「オペラ座の怪人」は先日東京公演が千秋楽を迎え、3月から大阪にてあらたに公演が始まるとのこと。
とにかく感動してしまったので
コロナが落ち着いてまた大阪に観劇に出かけられる日を祈りつつ
記録を兼ねて今日はオペラ座の怪人のあらすじ&感想を書いていきたいと思う。
以降ネタバレありです。
↓↓↓
公演を観にいく前、
「最初にざっくりどんな話なのか頭に入れておきたい」とコペルに聞かれたので
めちゃくちゃ簡略化してこのお話のあらすじを伝えようとしたら、
こうなった。
「うーん、このお話はさ…
その子を本気で愛してしまって、不器用に愛情をゴリ押しした結果
誘拐、監禁といった犯罪の域にまで手を染めてしまって…
子どもにも分かるよう大雑把に説明してます。
ファンの方、身も蓋もない言い方してごめんなさい。
でも実際にこんな話…
叶わない純愛の物語なのだ。
怪人ファントムは醜い容姿のため周囲の人から迫害された過去を持ち、仮面をつけてオペラ座の地下に隠れ住んでいる。
作曲家であり、音楽家。圧倒的な歌唱力をもつ。
怪人は誰からも愛されたことがなく、誰も信じてはいない。
怪人が愛しているのはいつも聞いているオペラ、音楽だけ。
そんな中で怪人はクリスティーヌの歌声の美しさと彼女の才能を見出し、恋してしまうのだ。
こりゃあモテるタイプよ。難易度高め。
怪人は姿を見せず、声だけでクリスティーヌに歌唱指導をする。
普通どこからともなく聞こえる謎の声に歌の指導をされたら
不気味に感じるだろうと思うのだが、
クリスティーヌは亡くなったバイオリニストのお父さんが「私が死んだらきっとお前の元に音楽の天使をおくるよ」と言い残していたので
素直ないい子なのだ。夢見がちだけどね。
パパの「音楽の天使を贈るよ」というのは
いつでも音楽は君のそばにいるよ、的な概念的な話だったんじゃないかしら。
怪人はクリスティーヌをプリマドンナにするためにいろんなことをする。
クリスティーヌへの毎日の歌のレッスンはもちろんのこと、
現プリマドンナへのダメ出し、支配人へ配役を変えろとの脅迫の手紙、劇場に頻発する怪奇事件…。
そして新作オペラ「ハンニバル」にて
そんな怪人からの様々な嫌がらせに腹を立てた
現プリマドンナのカルロッタが
オペラに出演しないと言いだして、降板に至る。
怪人が目論んだ通り
伸びやかな歌声が本当に美しくてうっとり。素晴らしい才能。
そんな彼女をもちろん怪人は眩しく眺める訳だが、
この時スポットライトを浴びて輝く彼女に熱い視線を注いでいる人物が実はもう一人いて
それが…
幼なじみのラウル子爵。
舞台で歌う彼女が美しく成長した幼なじみのクリスティーヌであることに気づき急接近してくるのだ。
クリスティーヌを愛する二人の男が彼女を取り合うわけだが、
普通に考えてラウルの圧勝だ。
それでも怪人にもアピールポイントがまるっきりないわけでもない。
クリスティーヌは死んだ父の面影を怪人に重ねて、音楽の指導をしてくれる怪人を慕っているし
何より二人は音楽で深く繋がっている。
ある日怪人は鏡の中よりその姿を表し、美しいバリトンボイスで歌い、彼女を酔わせる。
怪人はそんな陶然となった彼女の手を引いて
地下の自分の隠れ家に誘い込んでしまう。
この時のクリスティーヌは怪人の歌声に心奪われているようで、ちょっと脈がありそうな感じなんだけど
いざ怪人の地下室に行ってみたら
クリスティーヌに似せて作った等身大の人形(しかもウェディングドレスが着せてある)がおいてあったりするもんだから、クリスティーヌはドン引き。
気絶するほど怖がる。
だってちょっと考えてみて。
まだ恋人未満で、ちょっといいかなーくらいの関係の男性の部屋に遊びに行ったら
部屋に連れてくるんならやばそうなものは前もって隠しておけってば!
そう、このお話…
見ているうちに
って怪人をブンブン揺さぶりたい気持ちになってくるというか…
怪人がかわいそうで愛しく見えてくるのだ。
怪人は狂気と情熱に満ちた恐ろしい人物ではあるけれど、
意外と世間知らずでピュア、どこか幼稚で未熟な面も併せ持ち、とにかく不器用。
誰からも愛されてこなかったから、愛し方がわからないのだということが見えてくる。
余裕たっぷり、尊大に振る舞いながらも
素顔が見たいとクリスティーヌに仮面を剥ぎとられると
狼狽し、慌てふためくシーンなんかも
なんとも言えずかわいそう。
やめてあげて。
その後、次のオペラで
またクリスティーヌが端役にもどされたことに腹を立て
カルロッタの声を奪い失脚させたり、裏方の老人を締め殺してしまったり…
クリスティーヌへの愛情から暴走する怪人を
彼女は恐れるようになっていく。
クリスティーヌは劇場を飛び出し、怯えて逃げようとするが
そんな彼女をラウルは追いかけ、宥め、優しく受け止める。
オペラ座の屋上で見つめ合ってキスをして
愛の歌を高らかに歌う二人。
そしてそれを影からみていた怪人は悲しみ、怒り、
クリスティーヌにめがけシャンデリアを落とすのだった…
小4の娘でもやはりそう思うのね。
悲しいけれど愛した人に気持ちが届かないことってある。
自分が思う熱量で、相手も自分を思ってくれるとはかぎらない。
愛情を押し付け、思い通りにならない相手を恨んだり傷つけたりしても
結局それで愛を得ることなんて出来ないのだ。
怪人はこれを全部間違える。
シャンデリア事件の後、
怪人はクリスティーヌを再びさらって自分の地下室に連れて行き
助けに乗り込んできたラウルを縛り上げ
とクリスティーヌに迫るのだ。
もうめちゃめちゃだし、人も殺してるし
クリスティーヌが
っていうことになんかなる訳ない。わかり切ってる。
案の定クリスティーヌは泣きながら
「顔が醜いから誰にも愛されなかった」と言うファントムに「あなたが醜いのは顔ではなく心だ」とズバッと言い切る。
続けて「かなしみの涙今、憎しみに変わる」とも歌う。
怪人、やり方が下手過ぎる!
今までは音楽を通じて少なからず怪人を慕う気持ちもあっただろうし、音楽のみを友としたその孤独な境遇に共感や哀しみも覚えていた優しいクリスティーヌ。
でもこれで嫌われるを通り越して
憎まれてしまうじゃないかとハラハラしながら見守っていたら
クリスティーヌは高らかに
「見せてあげる、私の心」と宣言して
人質をとって卑劣で強引な態度で愛を迫ったというのに、
キスをされたファントムが彼女の体を抱きしめることも出来ず
手がクリスティーヌの肩に触れるか触れないかのところで、フルフル震えているところが本当に切なくて
と思ったら涙が出てしまった。
ファントムはキスをするクリスティーヌを引き剥がすようにして突き飛ばすと
縛っていたラウルを解放して
と叫ぶ。
そして愛の歌を歌いながら去っていく二人の声を聞きながら
ファントムはクリスティーヌ、アイラブユーと呟き
どこへともなく消えてしまう…。
コペルに聞いてみると
おー、そうね。
私もクリスティーヌは怪人に異性としての愛情は抱いていなかった派だわ。
父親に対するような思慕の情はあっただろうし、
怪人の孤独と歪んだ愛情に触れて哀れみの気持ちもあったかもしれない。
でもクリスティーヌは女として怪人の気持ちに応えるつもりはないんだと思った。
ラウルを殺されるより、怪人にキスすることを選んだクリスティーヌ。
そのキスからは自分への気持ちではなく、ラウルへの愛情が伝わってきてしまったのではないかしら。
このシーンは演じている役者さん、
見ている人によって解釈の分かれるシーンなのだと言う。
クリスティーヌのキスは孤独なファントムを救うための慈愛、救済のキスだったという説もある。
クリスティーヌは少なからずファントムに惹かれていて、愛を求めて必死に自分に縋りついてくるようなファントムに
愛を伝えるキスをした、と。
その愛情を感じたファントムが、初めて人の愛を知りクリスティーヌの本当の幸せを願えるようになって
二人を逃がした。
こっちの解釈には私は現実味は感じないけど
だいぶ深みのある大人なストーリーで素敵だ。
まぁどちらにしても
こうしてラストシーンの解釈について語り合うのも楽しい。
オペラ座の怪人、まだまだ語りたいことは尽きないが
本当に素晴らしかったのでぜひ見てほしい。
そして見た方と一緒に感想を語り合いたい。
最後一人になったファントムがクリスティーヌへの愛を歌うんだけど
それが本当に切なくて美しいので
それだけでも聞いてほしいわ。
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