絶景を紹介するテレビ番組を見ていた時、
息子に
「お母さんが今まで見た景色の中で一番美しかったところはどこ?」と聞かれた。
人生で一番、はすぐには思いつかないが
最近目にした中で、抜群に美しかった景色ならすぐに答えられる。
去年の7月、秋田で見た景色だ。
去年秋田を旅行した時、
男鹿の高速を走るマイクロバスの中で急激な尿意に襲われた。
女性ホルモンの低下か筋力の低下か
最近尿意を感じづらく、
尿意が来たと思えばいきなり膀胱破裂寸前という感じであわや漏れそうになるのである。
テレビCMで見る過活動膀胱というやつであろうか。
こういうの。
とにかくもうオシッコのことしか考えられないほど、切羽詰まっているのだが
目的地までは後20分、
ひきかえすことも止まることも出来ない山道で
我慢するより他はないのである。
こんな時、私はいつもバナナマン日村さんの考案した
「電車の中で便意を催してしまった時の対処法」を思い出す。
私は便意ではなく尿意ではあるが、絶対に負けられない戦いであるという点において
同じようなものであろう。
その1
尿意にも応用可能。
その2
だいたいこれで難を逃れることができる。
その3
限界は間近。長くは持たない最後の手段。
今までもスタンディングクロスには何度となく窮地を救われたし、
ヒールストップのストップの力は絶大だ。
ちなみにこの偉大なワザは人生のどこかで必ず役に立つから、と
子供たちにも伝えてある。
バスの中だったので座席から立ち上がることはできなかったので、
日村式の応用で
座席に座ったまま足を組んでいたが、
それも効果なく私は
秋田の美しい山々を見つめた。
ルッキンググリーンを発動したのは人生で2回目だ。
出来るだけ頭を空っぽにし、
鮮やかな木々の緑のみで
オシッコのことを考えないよう努めた。
それでもさらに尿意は強くなり、
絶望感も増していく。
私ももう40代、笑ってすむ年齢でもない。
なんとか隣で眠る娘に罪をなすりつけられないか、とか
その時がきたらお茶を股間にぶちまけるしかないかな、とか
最悪の事態を想定しはじめた時
車は目的地の灯台に到着した。
すぐさまトイレに駆け込み、用をすませ
その後登った灯台からの景色。
澄み切った風が吹き渡り、海と山と草原が360度広がっている。
広い空、どこまでも続く海、
そしてさっきまでの尿意はもうどこにもない。
爽やかだった。
限りなく爽やかで
涙がでるほど美しかった。
漏らさなくてよかった。
日村さん、ありがとう。