「ママ、見て！歯が生えたよ！」
娘に呼ばれた。
あ、本当だ。
去年の年末に乳前歯が２本抜けてからしばらく経つ。
麺類をすすっても戻ってしまう。
熱いものを齧ると歯茎を火傷する。
お肉が噛みきれない。
そしてなにより
このお間抜け顔。
結構不便だったよねー。
何ヶ月もそのおとぼけフェイスの歯抜け生活を続けていたけれど、
ようやく生えてきたんだね！
良かったねー！お姉ちゃんになったね。
え・・・？
ウフフじゃねー！！
前歯のところに鼻くそをつけて
歯が生えた風を装っていたのだった。
理解を超えたできごとを前に固まる母を尻目に
娘は
「びっくりしたでしょー」と
鼻くそを外し、食べた。
何故子どもは鼻くそを食べるのか。
最近はしなくなったが、思いかえせば息子もたべていた。
鼻をほじってから
口に運ぶまで少しも無駄のない流れるような動きにちょっと感動すら覚えたものだ。
この飽食の時代、ほかに美味しいものはいくらでもあると言うのに！
好き嫌いが多く、食が細く
たまに思いたって手の込んだご飯を作っても手をつけないことも多いというのに、
鼻くそは食べるという事実。
これは食べられるものだと
そんな風に誰かに教わった訳でもないのに 。
鼻くそを食べる行為は遺伝子に組み込まれているとでもいうように。
だいたいシンデレラやバレリーナに憧れる精神と鼻くそを食べる行為に矛盾はないのだろうか・・！
汚いよー！
とりあえず前歯はそのうち必ず生えてくるから
歯の代わりに鼻くそをつけるのはやめてね。
口に出すと馬鹿らしくて笑ってしまうくらい
当たり前のことを言って娘を諌めながら
ふと気になって聞いて見た。
普通ってなんだよ！
えー・・？
本当？
たべてみようかな？
何ごとも自分で試していない、
知りもしないことを
否定するのは良くないよね。
・・・・・。
イヤイヤ、
でも試したら４１歳の女性として何か大事なものを失いそうだからね。
汚いしね。
とりあえず鼻くそを食べるのはダメ。絶対。
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